マーケットトレンド の ベトナムの石油・ガス上流 産業
オフショア部門が市場を支配する見込み
- ベトナムの石油・ガス上流市場は、いくつかの重要な要因によって上昇傾向にある。第一に、ベトナムは南シナ海、特にクーロン(Cuu Long)やナムコンソン(Nam Con Son)のような海盆に、大規模な海洋石油・ガス埋蔵量を保有している。継続的な探鉱努力により新たな埋蔵量が発見され、投資を呼び込み、上流部門の成長を刺激している。
- 第二に、ベトナム政府は石油・ガス産業への外国投資を助長する環境を積極的に育成してきた。生産分与契約(PSC)の提供など、有利な政策や規制の枠組みを実施することで、政府は国際企業の探鉱・生産活動への参加を促してきた。
- さらにベトナムは、上流事業を支えるインフラ整備にも力を入れている。海上生産プラットフォーム、掘削リグ、パイプライン、陸上処理施設の建設に投資が行われている。こうしたインフラ強化は、ベトナムの石油・ガス探査、生産、輸出能力を強化する。
- 2021年、ベトナムの原油生産量は日量19万2,000バレルで、その大半は海上鉱区からのものだった。民間企業は、海上油田・ガス田の権益を取得することで、より多くの海上プロジェクトへの投資に関心を示している。さらに、2023年4月から5月にかけてのリグ数も増加した。
- 2023年1月には、ファロス・エナジー社がベトナム東部沖合のブロック125で掘削を開始する予定であると発表した。
- こうした動きは、予測期間中、同国の上流市場を加速させると予想される。
天然ガス需要の増加が市場を牽引する見通し
- ベトナムの石油・ガス上流市場は、天然ガス需要の増加に牽引され成長を遂げようとしている。この需要急増にはいくつかの要因がある。
- 第一に、よりクリーンな燃料への世界的なエネルギー転換の一環として、天然ガスは石炭や石油に代わるよりクリーンな燃料として脚光を浴びている。二酸化炭素排出量を削減し、気候変動に関する公約を達成するために、ベトナムは発電や産業用途に天然ガスを利用する方向にシフトしている。この移行は、ベトナムの上流部門における探鉱・生産活動の機会を生み出している。
- 第二に、ベトナムは発電能力を拡大しており、天然ガスは石炭に比べて炭素排出量が少ないため、発電所の燃料として好まれている。電力需要が増加の一途をたどるなか、天然ガス火力発電所の建設には天然ガスの安定供給が必要であり、市場における探鉱・生産活動の原動力となっている。
- ベトナムの産業・商業部門は、製造、石油化学、ホスピタリティなど様々な用途で天然ガスに大きく依存している。産業が成長を続ける中、燃料や原料としての天然ガス需要は増加しており、天然ガス埋蔵量の追加ニーズがさらに高まり、上流市場での活動が活発化している。
- 同国は最近、発電ミックスにおける天然ガスの割合を増やすことに関心を示している。世界エネルギー統計によると、2023年には天然ガスによる発電量はエネルギーミックス全体の9.5%になる。
- 2023年2月、ベトナム政府は、ビンディン省クイニョンにある2250MWのソンミ2CCGT発電所プロジェクトの投資方針を承認した。このプロジェクトには18億米ドルの投資が必要となる。建設は2023年に開始され、試運転は2025年に予定されている。
- 2024年3月、日本の三井石油開発(MOECO)は、ベトナムのBブロックガス田に投資し開発することを決定し、その開発費用分担は約7億4,000万米ドルであると発表した。このプロジェクトはベトナム南西沖330kmに位置し、ガス田とガス火力発電所を結ぶパイプラインで構成される。
- ベトナムは、国内生産を増やすことで、輸入天然ガスへの依存度を下げることを目指している。Energy Institute Statistical Review of World Energy 2023によると、2022年のベトナムの天然ガス生産量は、前年比8.3%増の日量7.5億立方フィートだった。
- こうした動きを受け、天然ガス需要の拡大が石油・ガス上流市場を牽引すると予想される。