マーケットトレンド の 米国のエネルギー貯蔵 産業
住宅セグメントが市場を支配する見込み
- 近年、米国におけるエネルギー貯蔵システム(ESS)は、地域全体の再生可能エネルギーインフラへの投資の高まりとともに、特に住宅部門で大きな成長を遂げた。年間可処分所得の増加や、米国全域での在宅勤務傾向の高まりにより、住宅での電力消費は予測期間中に増加すると推定される。エネルギー貯蔵システムは、ピーク時の停電時に家庭に継続的な電力供給を提供する。
- 住宅用エネルギー貯蔵市場を支援するために、米国全土で様々なインセンティブ・プログラムが実施されている。カリフォルニア州の自己発電奨励プログラム(SGIP)は、住宅用蓄電分野を支援し、新規および既存の分散型エネルギー資源に奨励金を提供している。さらに、エネルギー貯蔵技術の技術的進歩が進み、電池価格の低下や再生可能電源の普及につながっているため、住宅用エネルギー貯蔵分野は普及する可能性が高い。
- ニュージャージー州における住宅用太陽光発電設備は、ニュージャージー州政府によって導入されたSolar Renewable Energy Credits(SREC)のような有利な奨励制度やソーラーパネルのコスト低下により、大きな成長を遂げる可能性が高い。太陽光発電への移行傾向により、住宅所有者は電気代を節約できる。その結果、住宅用エネルギー貯蔵システムの導入が増える可能性が高い。
- さらに、2023年2月には、カリフォルニア州のネットメータリング政策(NEM3.0とも呼ばれる)が施行され、住宅用消費者は、屋上発電所で発電した余剰電力を売電し、系統電力価格が高騰した時に電力を貯蔵して使用するインセンティブが与えられた。同様に、商業消費者もNEM 3.0から利益を得ることが期待されている。
- さらに2023年5月、LGエナジー・ソリューション(LGES)は蓄電需要に対応するため、住宅用バッテリー蓄電システムを米国で発売した。同社のバックアップ・ソリューション「Primeは、バッテリー、インバーター、自動バックアップ装置で構成され、約19.2kWh~32kWhの容量で電気を貯蔵、使用、輸出することができる。
- したがって、こうした点から、予測期間中、住宅用セグメントが米国の蓄電市場を支配すると予想される。
再生可能エネルギー発電の増加が市場を牽引する見通し
- ここ10年、米国では再生可能エネルギーの設備容量と発電量が着実に増加している。太陽光や風力などの再生可能資源は、断続的かつ様々なレベルで発電するため、このエネルギーを貯蔵し、需要が高い時に使用することが極めて重要である。
- このため、最新のエネルギー貯蔵システム(ESS)は、再生可能エネルギー・プロジェクトに不可欠なものとなりつつある。再生可能エネルギー分野の急成長は、米国におけるESS市場成長の強力な原動力のひとつになると予想される。
- 2023年現在、米国の再生可能エネルギー設備容量は、2012年の160GWから約387.54GWに増加している。再生可能エネルギーの利用が増加しているため、エネルギー貯蔵の概念がこのように速いスピードで市場に浸透しやすくなっている。
- 伝統的に、米国で最も広く利用されているエネルギー貯蔵技術は揚水発電システムである。2023年時点で、米国には揚水発電による24GW以上の蓄電設備があり、さらに家庭用、商業用、公益事業用の分野で150GWの蓄電池がある。しかし、地理的な制約、広大な土地面積、バッテリーコストの低下により、この技術の予測期間中の需要増加は限定的と予想される。
- さらに、米国におけるエネルギー貯蔵システムの将来見通しは有望であり、特に再生可能エネルギーの導入が増加する中で、送電網の安定性とエネルギー安全保障の必要性が高まっていることが背景にある。また、手頃な価格の新しいリチウムイオン電池が開発されたことで、ESSと組み合わせた住宅用、商業用、産業用の太陽光発電システムの数が大幅に増加している。
- 以上のことから、近い将来、再生可能エネルギー発電の増加が市場を牽引すると予想される。