マーケットトレンド の 手術ロボット 産業
脳神経外科が大きな市場シェアを占める
- 脳神経外科は、泌尿器科や循環器科など他の診療科に比べ、手術ロボットの導入率が低い。脳には影響を受けやすい組織があり、それが成長ペースに影響しているほか、このような複雑で空間的制約の多い臓器の構造上の難しさもある。にもかかわらず、高齢化や医療スタッフの不足などの問題も、こうした手術ロボットの需要を高めている。
- 脳卒中、神経変性疾患、てんかん、持続性片頭痛などの神経学的問題の頻度が上昇しており、医師が新しい技術を採用する割合が増加しているため、必然的に神経外科市場の上昇につながる。
- さらに、この分野における開発が市場成長の原動力となっている。例えば、2022年8月には、米国最大の脳腫瘍研究の民間資金提供者の1つであるソンタグ財団の完全子会社であるソンタグ・イノベーション・ファンドがAiMメディカル・ロボティクスに資金を提供し、同社は業界初のロボットプラットフォームのプロトタイプを発表した。ソンタグ・イノベーション・ファンドは、脳腫瘍の治療法を発見し、患者の生活の質や寿命を向上させる可能性のある、最先端の初期段階の技術に投資している。
- 同様に、台湾の手術ロボットメーカーであるブレイン・ナビ・バイオテクノロジー社は、ロボット工学、人工知能(AI)、マシンビジョンを組み合わせ、リアルタイムの画像処理と低侵襲な結果でRAS手術を合理化する、NaoTracと呼ばれる脳神経外科ナビゲーションロボットを開発した。
- したがって、世界の神経外科市場は、市場の成長に寄与するいくつかの要因によって牽引されている。市場の主な促進要因としては、てんかん、アルツハイマー病(AD)、PDなどの神経疾患の有病率の増加や、マルチモダリティイメージングによるナビゲーションの普及などが挙げられる。また、MI血管内手術の需要の増加や技術の進歩も市場の成長に大きく貢献すると予想される。
- さらに、世界では約5,500万人が認知症を患っており、その60~70%をADが占めている。これは、ほぼすべての国で人口に占める高齢者の割合が増加しているためで、2030年には7,800万人、2050年には1億3,900万人に増加すると予測されている。最大の経済的負担を伴う認知症が、現在世界第7位の死亡原因であることは重要である。現在、AD患者のかなりの割合で未診断・未告知の発作が起こっており、AD患者では一般人口に比べて8~10倍多いことが明らかになりつつある。これが予測期間中の市場成長の原動力となるだろう。
アジア太平洋地域が最も高い成長を遂げる
- 中国、日本、インドにおける需要の高まりとロボット産業全体の拡大により、アジア太平洋地域の成長率が最も高いと予想されている。高価な手術を受けられる一部の裕福な患者が、中国の手術用ロボット市場の大半を占めている。アジア、特に日本、中国、韓国での技術改良は、医療用ロボットシステム市場に新たな収益源をもたらした。
- これらの機器は複雑な外科手術の臨床承認を得ているため、医療業界は革新的な手術ロボットの導入から急速に利益を得ている。IEEE(電子工学学会)の世論調査によると、アジア諸国のミレニアル世代の親は、米国や英国の親よりも手術用ロボットを受け入れる傾向が強い。アジア太平洋地域は、予測期間を通じて急速な拡大が見込まれているため、この傾向は十分に正当化される。
- 低侵襲手術ロボットは、その簡単な操作、高い手術精度、十分な術後成績を理由に、泌尿器科、心臓胸部外科、婦人科、一般外科、その他の分野で広く使用されている。 また、この地域の企業は、ロボットの初期費用やメンテナンス費用が高額であるにもかかわらず、製品の普及率を高め成長を促進するため、徐々に病院へのリース販売を開始している。
- ロボットの効率は、メーカーがエンジニアと協力して患者の転帰を高めることで向上している。各社は、世界中の手術室で手術ロボットが一般的な手法となるよう、AIや機械学習の効率を高めている。さらに、手術ロボットのトップメーカーのいくつかは、この地域に研究開発施設を設立している。例えば、2つの研究開発センターがメドトロニック社によってそれぞれバンガロールとハイデラバードで運営されている。