マーケットトレンド の ナノロボティクス 産業
薬物送達アプリケーションは著しい成長率を示すと予想される
- ナノボットは、薬物送達の一形態として大きな可能性を示す新興分野である。薬物化合物を運びながら、体内の到達困難な部位を標的にする能力は、生物医学的応用として非常に注目されている。この分野にはまだ進歩が必要だが、これまでの研究から、治療が困難な病気と闘う上で不可欠なものになることが示されている。しかし、多くの研究者にとっての大きな課題は、そのコンセプトをナノスケールで確実に成功させることである。
- ここ数年、体内を移動して薬剤を正確に送達できる人工ナノボットの研究が活発化している。2019年12月、IITグワハティの研究者たちは、生体適合性のある薬物送達剤として機能する、「ティーボットと名付けられた茶抽出物から合成されたナノボットを考え出した。
- 2019年9月、ミシガン州立大学の科学者たちは、化学療法の濃度をモニターする新しい方法を発明した。そこでは、超常磁性ナノ粒子を造影剤と唯一の信号源として用い、腫瘍の部位で体内の薬物放出を制御する磁性粒子イメージングを中心としたプロセスを作り出した。ナノボットは、がん腫瘍の届きにくい部分を標的にするために使用され、化学療法が成功する可能性をも高めることになる。
- 2019年には、DNAナノロボットが開発された。このナノロボットは、標的位置に到達するための軌道と歩行システムからなり、機能的分子を生成する能力を持つDNA鎖からなる自己組織化システムを含んでいた。研究者らが提案したナノロボットの薬物送達応用に関するコンセプトとデザインは、いずれも成功し、有望である。しかし、より大規模に展開する前に改良が必要である。
北米が大きなシェアを占めると予想される
- 予測期間中、北米が大きな市場シェアを占めると予想されている。同地域の成長の原動力の1つは、国防高等研究計画局(DARPA)と全米科学財団(NSF)によるナノロボティクスの支援が大幅に伸びていることである。ナノテクノロジー採用の増加は、医療への高支出と相まって、この地域の市場に好影響を与えると予想される。
- 米国は世界で最も医療費が高い国の一つである。2018年、米国は医療に約3.6兆米ドルを支出し、これは1人当たり平均約11,000米ドルに相当する。メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は、2028年までにこのようなコストは6.2兆米ドル、1人当たり約18,000米ドルに上り、GDPの約20%を占めると予測している。ナノロボティクスの用途の大半は医療関連であるため、この地域はそうした関連用途での技術採用の増加が見込まれる。
- しかし、コロナウイルスの大流行が米国の医療支出に与える最も直接的な影響は、COVID-19の検査と治療である。ワシントン大学のIHME(Institute for Health Metrics and Evaluation)のモデルによると、米国での流行はピークに達しており、ウイルスに対処するための支出という点で、政府に深刻な負担を強いることになるだろうという。研究者たちは、ウイルス対策にナノ粒子を使用するアイデアを考えているが、このアイデアはまだ初期段階であり、政府が支援するナノロボティクスの研究活動は大幅に遅れる可能性がある。