マーケットトレンド の 昆虫の餌 産業
昆虫の高い飼料化率
地球上の人口は2050年までに90億人に増加すると予想されている。世界人口の増加と消費者の要求の高まりにより、家畜、家禽、魚から十分なタンパク質を生産することは、将来の厳しい課題となる。世界中で、主に発展途上国において、約1,900種の昆虫が食されている。昆虫は良質な食品・飼料であり、飼料要求率が高く、温室効果ガスの排出量も少ない。したがって、食用昆虫の生産と消費に対する需要は、その栄養価の高さと人獣共通感染症を媒介するリスクの低さから増加している
昆虫は、鶏肉や家畜などの伝統的な肉類よりも多くのタンパク質を含み、低脂肪である。また、従来の家畜よりも温室効果ガスやアンモニアの排出量が少なく、有機廃棄物で栽培することもできる。これが市場成長の原動力となっている。昆虫は飼料をタンパク質に変換する効率が高い。例えば、コオロギが同じ量のタンパク質を生産するのに必要な飼料は、牛の12倍、羊の4倍、豚やブロイラー鶏の半分である。さらに、コオロギの最大80%が食用で消化可能であるのに対し、鶏や豚は55%、牛は40%であるとの試算もある。昆虫は冷血動物であるため、体温を維持するためのエネルギーを必要とせず、したがって飼料も少なくて済む。そのため、昆虫の飼育や飼料としての利用が先進国や発展途上国で盛んになっている
食肉の需要が高まるにつれ、穀物飼料やタンパク質飼料の必要性は高まるだろう。例えば、家畜は1kgの動物性タンパク質を得るのに、約6kgの植物性タンパク質を必要とする。飼料-肉変換率(体重を1 kg増加させるのに必要な飼料の量)は、動物の種類や使用されている生産方法によって大きく異なる。通常、アメリカの生産システムでは、動物の体重が1kg増加すると、鶏肉で2.5kg、豚肉で5kg、牛肉で10kgというように、それぞれ必要な飼料の量が異なる。したがって、家畜や家禽に比べて昆虫の飼料転換率が高く、栄養価が高いことが、予測期間中の昆虫市場の成長を促進する可能性がある
アジア太平洋地域が市場を支配
アジア太平洋地域では近年、食肉消費量の増加により、栄養価の高い昆虫飼料の需要が高まっている。中国はアジア太平洋地域で最大の昆虫飼料市場である。食肉の消費量は多く、ここ数年増加傾向にある。経済協力開発機構(OECD)によると、中国の1人当たりの肉消費量は2020年の44.4kgから2029年には52.84kgに増加すると予想されている。栄養価の高い肉への需要の高まりに対応するため、家畜にはタンパク質が豊富な昆虫が与えられている。このため、中国では家禽や豚などの家畜用の昆虫飼料産業が発展し、同国の昆虫飼料市場全体を牽引している
それとともに、昆虫養殖は中国農村部特有の繁殖産業であり、地域住民の収入源となっている。中国では、昆虫は2つのアプローチで飼料用に飼育・繁殖されている。昆虫を完全に家畜化して飼育する方法と、部分的に飼育し、昆虫の生息環境を操作して生産量を増やす方法だ。さらに、Haocheng Mealworms Inc.やGuangzhou Wuliang Biotechnology Co.Ltd.のような中国の地元企業は、飼料用大豆を米国からの輸入に頼らず、昆虫飼料を生産し、自給自足を目指している。このような国の発展は、中国の昆虫飼料市場の収益に拍車をかけている。したがって、この地域は、中国、韓国、日本などのさまざまな国で昆虫飼料の需要が増加しており、動物性タンパク質需要の増加も相まって、堅調な成長が見込まれている
さらに、インドは中国に次ぐ昆虫飼料市場である。FAOによると、インドでは、大豆やトウモロコシといった従来の飼料が家畜の飼育コスト全体の60%を占めている。そのため、同国では生産コストを節約し、トウモロコシや大豆などの飼料をめぐる人間と家畜の競合による需給ギャップを埋めるため、家畜用バッタ飼料の開発に焦点が移りつつある。食肉や食肉を主原料とする製品の需要が徐々に急増しているため、資源を大量に消費する鶏肉製品の栽培に農地が大幅に転用され、栄養不良が懸念されている。2021年7月、バンガロールを拠点とするNandus Foods社は、大豆を昆虫タンパク質に置き換え、ブラックソルジャーフライ(BSF)を用いて食品廃棄物を家禽用の高級タンパク質に変換する実験に成功した。こうした要因が、国内の昆虫飼料市場を牽引している