マーケットトレンド の 世界の飼料用抗生物質 産業
動物由来食品への需要の高まり
子牛肉、牛肉、羊肉、水牛肉、ヤギ肉、豚肉、牛乳・乳製品、鶏肉、卵などの動物由来食品。家畜の抗生物質使用による人間の抗菌剤耐性に関する世界的な懸念の高まりにもかかわらず、食肉需要は年々増加している。FAOによると、今後一定期間における世界の食肉タンパク質消費量は、人口増加と所得に大きく後押しされ、2030年までに2018~2020年比で14%増加すると推定されている。2030年までに、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉から得られるタンパク質は、それぞれ17.8%、5.9%、13.1%、15.7%増加すると予想される
さらに、南アジアは酪農生産の主要地域のひとつであり、2019年の世界の生乳生産量の20~25%を占めている。この地域では、インドが最大の生乳生産・消費国であり、中国、パキスタンがこれに続く。2020年、インドの食肉利用量は390万トンを超えたが、2030年には1億4570万トンに増加すると予測されている(FAOによる)
さらに、米国食肉協会によれば、抗生物質で処理された動物の肉を摂取すると、ヒトに抗菌剤耐性(抗生物質に対する耐性)が生じる。各国の政府は、農家を教育するなどして抗生物質の使用を監視し、規制するために厳しい規制に従っている。これにより、家畜への使用に対する誤解がなくなり、食肉需要の増加につながり、抗生物質の助けを借りた高品質の食肉生産の必要性が高まっている。このように、飼料用抗生物質の需要は、動物由来の食品に対する需要の急増によって拡大するだろう
アジア太平洋地域が最大の市場
アジア太平洋地域では、日本とオーストラリアが最も急速に成長している国であり、中国が最大の市場収益シェアを持っている。2020年2月、中国東莞市の東莞科技大学が実施した研究によると、飼料中の抗生物質の使用により、豚ふん尿の堆肥化中にオキシテトラサイクリン、スルファメラジン、シプロフロキサシンと関連する抗生物質耐性遺伝子の挙動が変化したと発表した
財団法人食品農林水産消費技術センターによると、2020年度の特定飼料添加物区分では、ポリエーテル系抗生物質が全体の87.6%(前年度81.2%)、オルトソマイシン系抗生物質が7.0%(前年度14.2%)、ホスホ糖脂質系抗生物質が5.0%(前年度4.7%)、ポリペプチド系抗生物質が0.4%(前年度申請なし)となっている。国内ではここ数年、飼料用抗生物質の生産量は減少の一途をたどっている。抗生物質の悪影響に対する認識が高まる中、プロバイオティクスなど他の飼料添加物の需要が高まっている
2018年、オーストラリアのロットフィーダー協会は、責任ある抗菌剤使用を促進するため、抗菌剤管理ガイドラインを制定した。それ以来、業界の62%が事業において抗生物質スチュワードシップ計画を自主的に採用している。業界は現在、2022年までにこのガイドラインを義務化することを目指している