マーケットトレンド の ヨーロッパのバイオ炭 産業
農業界における有機農業の需要増加
- バイオ炭は、農林廃棄物(バイオマスとも呼ばれる)の有機物を、熱分解という制御されたプロセスで燃焼させることによって作られる炭のような物質である。バイオ炭を土壌の肥料として使用することで、土壌の質が向上し、栄養分の運搬・循環能力が高まり、長期的な炭素隔離につながる。
- また、バイオ炭は汚染された土壌を修復すると同時に、環境面でも恩恵をもたらす。バイオ炭は多孔質構造であるため、嵩比重が低く、50~900m2 g-1という高い比表面積と高い保水力を持つ。
- ヨーロッパには、有機農業セクターが大きく成長している、高度で競争の激しい農業投入物市場がある。有機食品の消費量の増加は、有機農業部門に潜在的な成長機会をもたらし、そのため多くの新規生産者が、自主的な欧州バイオ炭認証(EBC)基準を満たしながら市場に参入している。
- 市場の力強い成長は心強いことではあるが、2030年までに有機農地面積シェア25%という欧州委員会(2020年)のFarm to Fork戦略の目標を達成するためには、有機農地面積の拡大を加速させ続けなければならない。欧州の消費者の間では、有機食品を購入する一般的な理由として、地元企業の支援、健康上の理由、農薬やその他の散布剤を使用しないことなどが挙げられている。
- 有機農業部門は、欧州全域で着実な成長を遂げている。例えばBÖLW(ドイツ連邦統計局)によると、ドイツでは2021年に35,716、2020年には35,396の有機農業事業者があった。
- 同様に、Defra, GOV.UKによれば、2021年のイギリスの野菜用有機栽培地は8,872ヘクタールで、2020年は8,700ヘクタールであった。
- したがって、上記の要因のおかげで、有機農業におけるバイオ炭の需要は予測期間中に飛躍的に増加すると予想される。
ドイツが欧州市場を支配すると予想
- ドイツは、複数のバイオ炭プロジェクトを積極的に実施しているトップ国のひとつである。例えば、2021年11月、森林経営や廃材から出る木材残渣をバイオ炭の形で安定した炭素に変換するNovoCarboバイオ炭プロジェクトが開始された。
- 同様に、ドイツのウンテレス・オーデルタール国立公園のデモサイトでは、湿地帯の低栄養草を熱分解や水熱炭化(HTC)によってバイオ炭に変換している。
- バイオ炭は農業用以外に、ドイツの畜産では家畜の飼料としても広く使われている。
- 2021年、鳥インフルエンザ(AI)などの動物疾病の蔓延により、配合飼料生産は深刻な影響を受けた。さらに、2021年には国内の乳牛の頭数が減少した。全体として、同国の飼料産業の成長は横ばいで、2023年には成長が見込まれる。
- ドイツ連邦統計局(Statistisches Bundesamt:Destatis)によると、2021年秋、ドイツの農業所有者は2022年の収穫に向けて110万ヘクタールの土地に冬菜種を播種した。
- さらに、次の収穫のために播種される面積は、2021年の耕作面積よりも86,700ヘクタール多く、前年比8.7%増となっている。
- バイオ炭は、水処理産業でも利用が拡大している。ドイツの水処理産業はヨーロッパ最大で、著しい成長を続けている。この国には、ヨーロッパ最大の産業廃水処理(WTP)プラント市場がある。
- この地域には約3,000の処理プラントがあり、約12,000の排出企業がある。毎年、9億2,000万立方メートルを超える産業廃水が、環境に安全に排出される前に処理されている。
- したがって、上記の要因は、欧州地域におけるバイオ炭のエンドユーザー用途の成長を示しており、それによって予測期間中のバイオ炭の需要を強化している。