オーストラリアのコールドチェーン物流 マーケットトレンド

豪州食肉家畜生産者事業団（MLA）は、2022年の牛屠畜頭数予測を670万頭から615万頭に引き下げた。これは、2022年第1四半期の殺処分頭数が予想を下回り、前年同期比6.3％減となったことを受けたものである。食肉処理能力減少の主な要因は、パンデミック（世界的大流行病）の継続的な問題、労働力の確保、祝日や天候による強制的な操業停止である。その上、生産者は牛群規模を回復させるため、より多くの家畜のと殺を控えている。と畜頭数の減少にもかかわらず、2022年第1四半期の生産量は前年同期比でわずか2.5％の減少にとどまった。記録的な頭数の牛が肥育システムで飼養され、価格上昇により体重が増加したため、2022年第1四半期の平均枝肉重量は2021年と比較して10.8kg重かった。2022年の牛肉総生産量は197万トンとなり、2021年より4.5％増加する見込みである。オーストラリアは2022年上半期に43.7万トンの生鮮・冷凍牛肉を輸出し、前年同期比5.0％減少した。第1四半期が最も影響を受け、2月と3月はそれぞれ2021年の数量より12.8％、15.0％減少した。6月には数量が増加し、輸出は前年同期比16.3%増となった

供給量の減少と物流の課題が輸出数量の主な制約となっている。長距離航路は運賃の高騰で魅力が低下し、中国の港湾閉鎖やウクライナ戦争による輸送ルートの混乱で、荷物が足止めされたり、長時間の迂回を余儀なくされたりした。価格が下がったとはいえ、オーストラリア産牛肉は、英国を含む他の主要生産国の牛肉よりも依然として高価である。英国とオーストラリアの自由貿易協定は年内に発効する予定だが、価格の上昇、オーストラリア国内の限られた供給量、世界的な海運問題のため、オーストラリア産牛肉が殺到する可能性は低い。海運問題はトレーダーがどの市場を優先させるかに大きく影響し、遠くの国よりも自国に近い国が好まれる。そのため、東南アジアがオーストラリアにとって最も重要な市場であることに変わりはない。オーストラリア食品コールドチェーン協議会（Australian Food Cold Chain Council）によると、物流会社やスーパーマーケットは現行のコールドチェーンの中で最善を尽くしているが、重要な管理ポイントにおけるもう1つの検証レイヤーの欠如が悪影響を及ぼしている。技術の進歩に伴い、コールドフードサプライチェーンの役割は、以前は市場性が限られていた冷蔵・冷凍製品をより長距離輸送できるようになり、より顕著になってきている。チルド品や冷凍品の輸送に統一的なアプローチを確保するための全国的な規制システムが存在しないことは、オーストラリアのコールドチェーンが直面する最も深刻な問題であった