マーケットトレンド の 世界的な抗結核治療薬 産業
抗結核治療薬市場は予測期間中、イソニアジドセグメントが高いCAGRを記録する見込み
イソニアジドはイソニコチン酸ヒドラジドとしても知られ、結核治療に用いられる抗生物質である。結核菌のエノイル還元酵素であるInhAを、NAD補酵素と共有付加体を形成することで阻害する
イソニアジド分野は、結核有病率の上昇、結核治療薬としてのイソニアジドの採用、臨床試験実施における企業活動の活発化などの要因により、予測期間中、抗結核治療薬市場において大きな成長が見込まれている。例えば、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicineが2020年6月に発表した論文「High-Dose First-Line Treatment Regimen for Recurrent Rifampicin-Susceptible Tuberculosis(再発性リファンピシン感受性結核に対する高用量初回治療レジメン)によると、高用量イソニアジドはinhA変異を有する結核菌(MTB)株に対して早期に殺菌活性を示すことが確認されている。さらに、同出典によれば、inhA変異が単離され、リファンピシン耐性の結核菌に対しては、高用量イソニアジドは結核二次治療レジメンへの追加として有用である。このことは、このセグメントの成長を増加させ、予測期間中の市場成長を促進すると予想される
また、2021年2月には、アフリカの5カ国、すなわちエチオピア、ガーナ、ケニア、モザンビーク、ジンバブエで、リファペンチンとイソニアジドの合剤である新しい短期コースの結核治療レジメンが試験的に導入され、成人の錠剤負担を週9錠から3錠に減らすのに役立っている。このように、結核治療のためにイソニアジドと他の薬剤の併用が増加していることが、予測期間中の同分野の成長を促進すると予想される
したがって、前述の要因により、調査対象市場は予測期間中に拡大すると予想される
北米が市場を支配し、予測期間中も同様の見通し
北米は、同地域における結核患者数の増加、確立された医療インフラの存在、高い医療費などの要因により、結核治療薬市場を支配すると予想されている
同地域における結核罹患率の上昇は、市場成長を促進する重要な要因である。例えば、米国疾病予防管理センターの全国結核サーベイランスシステム(NTSS)によると、2021年には米国50州とコロンビア特別区(DC)で合計7,860件の結核症例が報告された。報告された結核患者の全国発生率(人口10万人当たりの患者数)は、2020年と比較して2021年には9.4%増加した(2.37人)。また、同出典によると、2021年の人口における結核症例の増加は、2020年に症状が発現した人の症例診断の遅れによるものである。また、同出典によると、2021年に結核患者数が最も多い国は、カリフォルニア州(1,750人)、テキサス州(991人)、フロリダ州(499人)、ペンシルベニア州(166人)、オハイオ州(149人)、アリゾナ州(129人)である。このように、人口の間で結核の負担が増加していることから、効果的な薬剤に対する需要が高まり、予測期間中の市場成長が期待される
さらに、同地域における医療費の増加は、効果的で安全な医薬品の開発に向けた企業活動を活発化させ、市場成長を促進すると予想される。例えば、経済協力開発機構(OECD)によると、2022年、GDPに占める米国の医療費の割合は約17.8%であった。さらに、メディケア&メディケイド・サービスセンター(CMS)が2022年3月に発表したデータ「CMS Office of the Actuary Releases 2021-2030 Projections of National Health Expendituresによると、2021年から2030年にかけての国民医療費の年間平均成長率は5.1%になると予想されている。また、2020年の国民医療費は4.1兆米ドルであり、2030年には6.8兆米ドルに達すると予測されている
したがって、前述の要因から、調査対象市場は予測期間中に拡大すると予想される